あなたという、僕の花
「なあ、ゾロ」
「何?」
「いいのか、あの、婚約者だったやつ、あのまま帰しちゃって」
「だってひきとめるわけにも・・・」
「そうだな」
サンジの家の縁側にならんで腰かけて、日が沈んでいくのをながめている。
ゾロがサンジの求婚にうなずくのを見ると、サガは黙って出て行った。
ふたりして魂が抜けたようにその場を動けなかったからあとで知ったのだが、
先生がそっと見送ったらしい。
そのとき、お幸せに、と言い残していったと聞いて、ゾロはすこし申し訳ない気持ちになった。
サガは、相手方のたっての願いで地元の名家の息女とお見合いをすると聞いた。
彼を気に入っていたばあやがどうやってか調べてきたのだ。
サンジは縁台から飛び降りると、藍染の小袖を着たゾロが降りるのに手を貸した。
手をつないで芝生を踏む。
庭はもう、準備をととのえて春の到来をいまや遅しと待っていた。
若葉は芽のいろをわずかに見せ、下生えが存在感を増しはじめ、梅の蕾はふくらんでいる。
「水仙、これでもう今年は最後だ」
サンジが指をさした先に、水仙がまだ数本だけ花を残していた。
あと幾日ももたずにしおれる運命にあるであろう花は、花弁にも瑞々しさが足りない。
それでも凛として、健気に背筋をはっている。
ゾロはずっと聞いてみたかったことをおもいだす。
「あの、」
「ん?」
「あの日・・・」
「あの日?」
「どうして水仙が咲いたって言いにきたの?」
水仙は夕日を浴びてうすべに色の花のように見えた。
しばらくだまっていたあと、サンジはゆっくりと口をうごかした。
「あの前の日にさ、水仙が咲いてるのをみつけたんだ。
庭になんか出るのひさしぶりで、無性になつかしくて」
サンジの頬も夕日を浴びて花とおなじ色に見える。
自分の頬もその色に染まっているだろうと、ゾロはおもった。
こんなに胸が高鳴るのだから、もっと濃い色かもしれない。
「急にゾロに会いに行こうっておもった。
毎年会う勇気はなくて、花だけ届けさせてたけど・・・会おうっておもったんだ。
だって、水仙は、ゾロに似てる気がしたから」
つないだ手ははなさない。
想い出も穢さない。
あの日とおなじよう、黙りこんだふたりを、水仙だけがもの言わず、そっと見守っている。
だめだ・・・結局お笑いストーリーさ・・・ハハハオレは道化さ、ハハハ・・・泣
ぶっちゃけ一話目だけのほうがロマーンとしてはおもしろいとおもう。徒労感。
でも、いちおう終わったことに安堵。